老人が教えてくれた、うまくしゃべれない人への助言
- 2022.10.21
- とある老人の助言

黄緑色の苔でびしっと覆われている洞窟の入り口をまたぐと、その老人は腰を落としては佇んでいる。
老人は何でも知っている。おおよそ想像のつかない世界のことを何でも知っていて、教えてくれる。
ある日、僕が老人に「うまくしゃべれないことがある」という相談をしたら、僕がうまくしゃべれない理由から、どうやったらうまくしゃべれるのかまで、詳しく教えてくれた。
老人曰く、しゃべる、というのは、頭で考えたことを口から発することを言うらしい。つまり、うまくしゃべれない理由は、うまく頭で考えられていないか、うまく口から発せていないかの二つに絞られるようだ。
僕がうまくしゃべれないといったのは、つまり、後からであればきちんと意見を述べれるような質問に対しても、とっさには答えられないことがあるからだった。
老人は言った。「君は、時間をかければしっかりと答えることはできるのだね」
僕は答えた。「できると思います。」
老人「では君は、考えながら話すことができるかね?」
僕「難しいと思います。」
老人「そうだね、それは難しいだろう。ただ、それをできる人はいる。」
老人曰く、大きく分けて話し方には二種類のタイプが存在するらしい。考えてから話す話し方と、「考えらしきもの」をとにかく直接脳から口にする話し方である。前者は自分の発言を一度脳内で吟味してから発言しているが、後者は自分が発言する内容を吟味する時間がないため、「思ったこと」がそのまま口に出てしまうのである。
老人「ふと口が滑った。余計なことを言ってしまった。という人は、後者の話し方をしていることが多い。そして、いきなり話題を振られても、少し考えてからしか話せない人は、前者の話し方をしている人である。」
「ではちなみに、いきなり分からない話題をふられた際、脳内から直接話すタイプの人はどうリアクションすると思うかね?」
僕「、、、分かりません。どうするのでしょう。」
老人「え、それは難しいテーマですね、などと一言はさみ、その間に考え、話し出すのだよ。今の君の反応は、まさに考えるタイプの反応だったね。笑」
僕「、、、」
老人「一言挟むとと何が良いかというと、周りの人は君がそのテーマを難しいと考えていることが分かるから、君が少し沈黙しても心の準備をして待ってくれるんだ。でも、質問した際にいきなり黙り込んでしまったら、周りの人は聞こえていたかな?などと余計な心配をすることになる。ただし、考えてから話すのはとても大切なことでもあるんだ」
僕「そうなんですか、」
その後も、老人は懇切丁寧に思考型と直接発言型のメリットとデメリットを教えてくれた。思考型は普段から物事を考えてから発言しているため、直接発言型に移行していきなり思っていることを発言しても、失言が出にくい傾向にある。一方、直接発言型は普段の生活において深く考え事をするというよりはどちらかというとコミュニケーションによって思考を整理する傾向にあるため、会話の瞬発力が高い代わりに失言等のミスも多くなるのだそうだ。なので、直接発言型の人は逆に少しだけ、場の状況を考えてから発言するようにすると良いらしい。
老人「実は、多くの人にとっては会話というのは間違いが含まれていても良いんだ。君が考えるほど全てが正解でないといけないわけではないし、どんなに偉い人でも、間違えることはある。ようは気楽に、思ったことをなんでも話してみるように心がけると、未来が少し明るくなるかもしれないね。」
僕「ありがとうございます」
僕は、少しだけ心が晴れたような気がした。
このシリーズは、老人と「僕」の会話形式でお送りしています。
なお、実在の人間とは何も関係ありませんのでよろしくお願いします。
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