キベラスラムを二度訪問して考えた【最も困っている人はスラムにいるのか?】という問い
僕は先日、ケニアの首都ナイロビのキベラスラムを訪問しました。
そのときにやはり一回目に行った時と同じように、現地の人々の明るさや、平和さを感じて、とても心が温まったのですが、同時に、一つ気づいたことがあるので述べたいと思います。
それが、「本当に大変な状況に置かれている人というのは、スラム(貧困地域)にすら住めない人なのではないか」ということです。
僕は、過去に日本で路上生活者の支援ボランティアに参加したり、スペインやタイやマレーシアなどで路上で暮らす人々を見たりしてきました。
スラム地域も、僕は南米パラグアイ共和国においてバニャードスールというスラム地域で活動してきた経験があり、キベラスラムをパラグアイのスラムと比較する観点で訪問しました。
そうして見ていくと、環境という観点からは(汚さや、住宅が密集しているという点)キベラスラムの方がやや住みにくそうに見えたのですが、治安に関しては、圧倒的にキベラスラムの方が安心できるという感覚を覚えました。
もちろん、キベラスラムの最も危険と言われる地域にはまだ入らせてはもらっていません。それでも、その「入れる」地域のみを鑑みても、キベラスラムの方が治安は良いように思われました。
例えばパラグアイだと、スラム内には麻薬の常習者と見て判断できるような人が歩いていて、すれ違ったりするのは全く珍しいことではありません。しかし一方でキベラスラムには、麻薬常習者と一目で判断できる人は一日歩いてもほぼ見あたらず、私たちを案内してくれたガイドも、パラグアイにいたころ案内してくれた方の緊張感とは異なっており、穏やかな感じでした。
そしてもう一つ感じたのが、キベラスラムの方が、ナイロビの中心部よりも安心できるということでした。なぜだか、、.
ナイロビの中心部のシティーと呼ばれる地域(CBD/Central Business Districtとも呼ばれるらしい)では人が多く、交通量も多く、テロの危険性も考えると、いつどこで何が起きるか常に目を光らせて注意する必要性があり、けっこう緊張しました。しかしキベラスラムでは人々は基本的に温かく、挨拶をすれば返してくれるし、子どもたちがたくさんいて、すれ違いざまにハイタッチとかしてくれる。このアットホーム感が、僕は圧倒的に都市の中心部よりも好きになりました。
僕は確かに、今回は最も危険なエリアには入ることは出来ませんでしたが、何となく、実は貧困地域にすら住めない人こそが、最も困っているのではないかという、(もしかしたら)至極当たり前のことを、この日、思い至りました。
というのも結局、貧しい人々で集まって暮らしている地域では、周りも貧しく、そのため相対的な貧しさを感じづらいという側面があります。特にキベラスラムはアフリカ最大と言われる巨大なスラムなため、相対的な貧しさを感じづらいという傾向は大きいように思われます。要するに、キベラスラムは同じような状況下に置かれた仲間がたくさんいるコミュニティであると感じました。
ということは、キベラスラムにすら住めず、都市部の路上に寝泊まりしているような人の方が(ケニアではまだ直接確認してはいませんが)貧しく、困窮した状況にあるのではないか。キベラスラムような、貧しい人々が集まっている地域(便宜上、貧困地域と記述します)においては人々はお金はあまり持っていなくても、コミュニティ内で助け合うことができる。しかし、路上に生活している人々は、お金もなく、人とのつながりも小さくなってしまう。
これらをまとめると以下のようになります。
生活が厳しい順序
貧困地域に住んでいる人>都市の路上に生活している人
経済× 人間関係○ >経済× 人間関係△
そう考えることで、僕の中で引っかかっていたことがつながりました。
また、日本やスペインにおいてもこのことは言えるのではないか。さらに先進国においては基本的に貧困地域と呼ばれる地域は解体される傾向にあるため、貧しくなってしまった人で、人間関係などの蓄積がない人は、直接路上などに放り出されかねないということが起きているのではないか。そしてそれらの人々は、途上国と言われる国々の貧困地域で暮らす人々よりも厳しい状況にさらされているのではないか。
僕は、最も困っている人の状況を知りたいという思っていますが、だとすればもしかしたら、いや7割方、最も困っている人々はスラムにはいないのではないかと、このキベラスラム訪問によって感づかされました。
もちろんスラム街にも、困っている人は存在します。ただ、同国で路上で暮らさざるを得ない人の方が、シンプルに厳しい状況にあるのではないか。これが、僕の中で僕が建てた新しい仮説です。同時に、他のスラム地域も見て、この仮説が本当かどうかを確かめてみたい。そういう思いができた一日でした。
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