国際協力においてよく使われる「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」について思うこと
- 2020.03.13
- 社会問題
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」
国際協力の勉強をしていると、必ずと言っていいほど一度は耳にする言葉がある。
それが、「魚を与えるのではなく(魚の)釣り方を教えよ」というものである。
調べてみるとこの言葉は老子が言ったものらしく、教育界でも良く使われる言葉のようだ。
以下に参考になりそうな記事を載せる
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」とはどういうことか?
上記の記事でも書いてあるが、直接は
「飢えている人に魚を与えても一日で食べてなくなってしまうが、魚の釣り方を教えればその人は一生食べていくことができる」
という意味であり、ただ物資を与えるだけで一時的な支援にしてしまってはほとんど意味はなく、技術を伝えることで人々が自立できるようにすることの大切さを述べている。
これ自体は素晴らしい考え方だと思う。技術を伝えるのは大切である。
ただ、この言葉は、あたかもそれが簡単であるかのような印象を与えやすいという点に注意するべきであると思っている。
魚の釣り方を教えるのは、簡単ではないのである。
昔、僕がこの言葉を聞いて、Let’s国際協力!みたいなノリで海外に行ったときに思ったことがある。
「そもそも外から来た僕らが、全く異なる文化と言語を持つ人々に、その社会の背景も理解しないまま魚の釣り方なんてね、教えられんわ!(笑)」と。
現実には、その社会での生き方という観点で見れば、現地に住んでいる人々の方が完全に格上なのである。
そして僕みたいな特に専門性のない人が海外に行くときは、社会の背景や文化や言語をある程度理解したとしても魚の釣り方なんて教えられないことがほとんどである。
なので、「Let’s魚の釣り方を教えようYeah✌」みたいな感覚で現地に行くことは全くもってお勧めしない。
もし、あなたが専門家でもなく、国際協力などに関して初心者なのであれば、一か月やそこらの滞在で何かを教えてやる!と思うよりは、まずは色々教えてもらいに行こう。くらいの感じで行って、もし何か気づいたら、ここはこうしたらどうなるの?と言う風に聞いてみるくらいが良いのではないだろうか。
実際に、また、仮に専門家であったとしても、魚の釣り方を教えることは簡単ではないし、それがきちんと社会の役に立つかといった事前調査も十分に行う必要がある。
僕の大学の恩師も様々な収入向上プログラムを手掛けているが、参加者全体の10%でも定期的な収入が向上すれば良い方だと述べていたこともある。
このように、部外者が魚の釣り方を教える事業を組むのは相当な注意がいるが、
その一方で、現地の人が現地の人にノウハウを教える事業であれば、良いのではないかと思うこともある。
私はここ二年で、パラグアイにおいて三つほど国際協力の事業に関わってきたが、それを通して、現地のノウハウを持つ人にお金を払い、現地の必要とする人に教えてもらうという方法はなかなか良いのではないかと考えている。
なぜならば、現地の人は確かに魚の釣り方を知っているからである。
結論
「魚をあげるより釣り方を教えよ」などと言われているが、
その社会の外部から来たものが魚の釣り方を教えるのは簡単ではない。
そもそも外部者は彼らの釣り場のことすら知らないからである。
まずは釣り場を教えてもらう必要がある。
主に現地の人が現地の人にノウハウを教える事業にするのは一つの手である。
ノウハウを伝える側も現地の人なので、自動的に受益者が増える。
また、変に大金をかけて無理やり外部からノウハウを伝えるよりは、
もはやさっさと魚を配ってしまった方が良いのではないだろうか
という視点も重要かと思う。
大金をかけてノウハウを伝えようとして受益者が10%でも出ればよい事業よりも、最初からお金を配ってすぐに終わらせた方が投入がひとまとめに行え、変なところにお金が回るのを防げるという可能性がある。
多くの助成型の事業では、受託者にもそれなりに利益が出るように事業受託主の被雇用者の給与をはじめとした様々な予算が積まれる。外部者がノウハウを伝えようとすると、その渡航費や滞在費等様々な費用が必要となるが、ものによってはそれらの費用をまとめて現地の人々に寄付してしまった方が効果が上がるのでは、と思えるような事業もある。
これは現金給付型の事業である。Give Directlyなどすでに現金給付をメインで行っているNGOもある中、現金給付がどのような効果をもたらすか等に注目が集まっており、私自身もとても注目している。
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